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特殊治療

未熟卵体外受精

採卵できる卵子は大きく分けて、未熟卵子と成熟卵子にわかれます。卵子は、成熟卵子になると受精する能力をもちます。通常の体外受精では、この受精する能力を持った《成熟卵子》を採卵し、受精・分割した胚を胚移植しますが、この未熟卵体外受精は《未熟卵子》を採卵し、培養液の中で成熟させた卵子を受精させ、分割した胚を移植する方法です。

未熟卵体外受精の利点

卵巣過剰刺激症候群の回避に有効

通常の体外受精では、排卵誘発剤を用いた卵巣刺激をおこなうことにより、一度の採卵で複数の卵子を回収することができます。しかし、卵巣刺激の副作用で卵巣がはれたり腹水が溜まったりすることがあります。未熟卵体外受精は基本的に卵巣刺激を行わないため卵巣過剰刺激症候群の回避に有効です。身体的・経済的・時間的な苦痛が軽減します。

未熟卵体外受精 Q&A

Q1. どんな人に未熟卵体外受精は向いていますか?

A1. 一般には多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)の方が向いているといわれています。
多嚢胞性卵巣の方は卵巣過剰刺激症候群の危険性が高いため、卵巣を刺激しないこの方法を選択することがあります。また、採卵できる数も多い傾向にあります。

IVF JAPANグループである大阪クリニックは、日本で始めての妊娠・出産例を報告し大きく取り上げられました。また最近では、培養環境を工夫し、卵子の成熟率や妊娠率を高める研究をすすめています。

Q2. 通常の体外受精で出生した児と比較して、先天異常の児の割合はどうですか?

A2. IVF JAPANでは、今までに出生した児の身体発育と先天異常について調査を行っています。現段階では、先天異常は1児にしか確認されておらず、今後も継続的に児の予後調査を行っていき報告していきたいと思っています。

ピエゾICSI

新しい顕微授精法 –Piezo ICSI-

当院では従来の顕微授精に比べ、より卵子に優しく安定した顕微授精を行えるピエゾマイクロマニピュレーターを導入しています。卵子の細胞膜が弱く、従来の顕微授精では卵子の変性が起こりやすかった卵子に対して有効性が確認されている方法です。

G-CSF

IVF JAPANグループでは2014年1月から新しくG-CSF(商品名:フィルグラスチム)の治療を開始しました。これは最近、着床時期の内膜にGM-CSFというサイトカインが 多く存在することがわかり、着床に大きく関わっているのではないかという研究報告に基づいております。海外では実際に着床前の内膜にG-CSFを投与したところ、子宮内膜が厚くなり、妊娠したという報告や、内膜は厚くならなかったけれど薄くても妊娠したという報告がなされました。このことから、内膜を厚くするよりも、着床環境をよくする作用の方が強いと考えられ、その意味でも十分効果がある治療法だと考えています。実際、どのような機序で着床率が上がるのかは分かっておりませんが、その効果についても今から検証されるものと考えております。G-CSF療法を希望される方はそのことをご理解の上、受けていただくようお願いいたします。なお、この治療については、当院で治療中の患者様でG-CSF投与のみの受診は出来かねますのでご了承下さい。詳しい内容・料金については、診察時にお問い合わせ下さい。

二段階胚移植法

更なる妊娠率の向上を目的とし、当クリニックでは二段階胚移植法を行っています。簡単に言うと、採卵後2日目あるいは3日目に行う分割期胚移植と、採卵後5~6日目に行う胚盤胞移植とを組み合わせた方法です。二段階胚移植法は次のような原理に基づいて開発された技術です。最初に入れた胚が子宮内で何らかの作用をして子宮内膜を着床準備状態にしてくれ、そこへ胚盤胞を移植すると着床しやすくなるというわけです。当院でもこの方法を、失敗を繰り返す難治症例に応用して成果をあげています。

二段階胚移植法の利点

胚移植キャンセル率の低減と妊娠率向上への試み

胚盤胞移植のみを行う場合と比べ、胚移植のキャンセル率が下がるという利点があります。胚盤胞移植のみ行った場合、採卵後2~3日目まで胚が順調に育っていたにもかかわらず、胚盤胞まで発育せずに胚移植がキャンセルになってしまうことがあります。
結果的に、採卵後2日目(Day2)あるいは3日目(Day3)で胚移植をして、胚盤胞への発育は胎内環境での発育を期待する方がいいということになります。
二段階胚移植法では、はじめにDay2またはDay3で胚移植を行ったが、二段階目の胚盤胞移植は胚が発育せず移植キャンセルということもあります。しかし、胚移植自体をキャンセルするということは回避でき、妊娠への望みをつなげる事ができます。また、このような一段階目のみの胚移植でも、妊娠・出産しています。

また、この治療法は子宮内膜の薄い方にも効果が期待でき、妊娠率の向上が期待できます。当クリニックでも、良好胚盤胞移植を行ったにもかかわらず妊娠に至らなかった症例に対して二段階胚移植法を積極的に行っています。

シート(SEET)法

SEETとはStimulation of Endometrium Embryo Transfer(子宮内膜刺激胚移植)の略語です。これは、発育する胚から産生されるシグナル物質をあらかじめ子宮内に注入しておき、子宮内膜の準備を整えてから胚盤胞移植を実施する方法です。
当院では以前より二段階胚移植法という、数日の間隔をあけて同一周期に2回の胚移植(分割期胚移植+胚盤胞移植)を組み合わせて行う方法で、高い妊娠率が得られてきました。
しかし、二段階胚移植法で2個の胚を用いる場合、双胎妊娠の可能性を考えておかなければなりません。双胎妊娠は母児ともに合併症を伴いやすい、リスクの高い妊娠です。しかし、シート法では、初期胚移植の代わりに胚盤胞を培養した時に得られる培養液だけを注入することで、双胎妊娠を引き起こすことなく、二段階胚移植時と同様の子宮内膜刺激を誘導し、数日後に移植される胚盤胞を着床しやすい条件で胚移植することができます。
ただしシート法を実施するためには、胚盤胞培養液をあらかじめ凍結しておかなければいけないので、胚凍結を計画する採卵周期から準備が必要になります。また、凍結可能な良好胚盤胞が得られた時のみシート液の保存が可能です。

ヒアルロン酸含有培養液

胚が子宮内膜と接着するのを促す接着剤のようなものがあればなあと思われたことはありませんか?それを現実にしたEmbryoGlue®(エンブリオグルー(ヴィトロライフ社))、UTM™(ユーティーエム(オリジオ社))という培養液があります。両培養液には、子宮内に自然に存在する「ヒアルロン酸」が含まれており、そのヒアルロン酸は水に溶けると粘性が高くなるため胚と子宮内膜を接着させるための「のり」のような働きをすると考えられています。

これらの培養液はすでに全世界で使用されており、何度胚移植を行っても妊娠に至らない反復不成功例や高年齢の症例においてEmbryoGlue®が有効である可能性が示唆された報告があり、IVFJAPANグループの研究でもその効果は確認されています。UTM™も同様にヒアルロン酸を含み同様の効果が期待できますが、含まれるヒアルロン酸の濃度が最小限に薄められているところに違いがあります。

EmbryoGlue®もUTM™も、写真のようなディッシュに培養液を少量入れ前日からインキュベーター(温度を一定に保つ機能を有する装置)に入れて温めておき、移植当日の胚の観察後に移植予定の胚を2時間程度これらの培養液に浸け、両培養液とともに胚を吸引し子宮に胚移植します。これらの培養液は、FDA(米国食品医薬品局)にも認可されており、受精卵に対して安全であることがわかっています。当院では全て胚移植で上記のヒアルロン酸含有培養液を使用しています。